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〇 試験研究

1 令和4年度の取組

(1) 森林の有する多面的機能の発揮(森林環境部)
適切な更新のための再造林技術や多様で健全な森林への誘導技術、県土保全のための技術、
亜熱帯林における森林の経営管理に関する技術の開発に取り組みます。


・ 次世代スギコンテナ苗の成長特性の解明

・ 現地条件に応じた下刈り作業の省力化に関する研究

・ 成長に優れた苗木を活用した施業モデルの開発

・ コンテナ容器等による広葉樹実生育苗に関する研究

・ 不採算人工林における森林再生支援事業

・ 森林病虫害等の防除に関する研究

・ 森林病虫獣害防除薬剤委託事業

・ 奄美の既設試験地調査

・ 既設試験地調査

(2) 林業の持続的かつ健全な発展(資源活用部)
望ましい林業構造確立のための技術や特用林産物の収益性向上のための技術の開発に取り
組みます。

・ スギ樹皮の林業資材への利用技術の開発

・ サカキの平地栽培に関する調査研究(令和4年度新規)

・ 効率的な竹材生産技術の確立

・ 既設試験地調査(再掲)

令和4年度試験研究内容の詳細はこちら

2 最近の主な試験研究

  (1) 小型穂を用いたスギコンテナ苗生産について(平成29〜令和元年度)

 スギさし木コンテナ苗の増産に当たっては、多くの挿し穂が必要になるため、採穂木から多くの

挿し穂を採取することのできる「挿し穂の小型化」に着目し、小型穂を用いたコンテナ育苗試験を

行いました。

  〔結果〕

挿し穂の長さが20cm以上であれば、挿し付け後(秋ざし)、概ね1年で、苗高・根元径の平均値が

本県の出荷規格(苗高35cm以上、根元径5mm以上)に到達することがわかりました。

また、小型穂を用いて短期間で規格苗を育成するなら、用土量と育苗密度が苗木の成長に及ぼ

す影響を考慮し、300ccコンテナの全ての孔に挿し付ける方式が最適であると判断されました。

 (2) 下刈りの時期分散及び回数削減について(平成28〜令和2年度)

主伐面積の増加に伴い、下刈りを必要とする造林地の面積も累積的に増加していますが、林業
労働力は長期的にみると減少傾向にあります。今後、下刈りを確実に行っていくためには、下刈
りの時期分散や回数の削減が必要であり、春季(5月)下刈りや下刈り回数削減の可能性につい
て試験しました。

 〔結果〕

下刈りの時期分散については、春季に下刈りを行ったところ、夏季の下刈りと同等以上の効果が

得られ、春季下刈りは適用が可能であることを確認しました。また、下刈り回数の削減について

は、植栽木と競合する雑草木が最大高さ2m程度の草本植物(ススキなど)であれば、下刈り回数

を5回から3回に削減することが可能であることを確認しました。 

   (3)  スギ幼齢木で発生したアワノメイガによる穿孔被害について(令和元〜令和2年度)

植栽1年目のスギ幼齢木で、主軸の折損被害が発生しました。これまでに知られていない被害

形態であったことから、害虫生息状況や被害率等の調査を行いました。

 〔結果〕

主軸の折損は、アワノメイガ幼虫の穿孔が原因であることが明らかになりました。植栽木の約60

%で穿孔がみられ、穿孔が深いものでは折損が生じていました。アワノメイガはトウモロコシなど

の害虫として知られ、県内でも広く分布していますが、スギを含む樹木での被害は国内で例が

なく、初確認となりました。

   (4)  カメムシによるセンリョウの落果被害について(平成30〜令和元年度)

落果被害が発生するセンリョウ圃場で、これまでにセンリョウへの寄生や加害が知られていない

ムラサキシラホシカメムシの生息が確認されました。そこで、ムラサキシラホシカメムシをセン

リョウの枝先に放飼して吸汁や落果を観察するとともに、センリョウ果実を餌として飼育を行い、

生育・繁殖状況を調査しました。

 〔結果〕

ムラサキシラホシカメムシはセンリョウ果実を吸汁し、吸汁された果実は落果すること、飼育上

ではセンリョウ果実のみを餌として成育・繁殖が可能であること等を確認しました。

   (5)  サカキの省力化栽培技術の開発について(令和元〜令和3年度)

管理不十分なサカキ林を,萌芽更新によって省力的で生産性の高い林分に仕立て直す技術を

開発するため,25年生以下のサカキを高さ60cmで台伐りし,萌芽枝の発生状況や本数調整に

よる成長促進効果について調査しました。

 〔結果〕

台伐りしたサカキからは全て13本以上の萌芽枝が発生し,サカキの旺盛な萌芽力と4成長期

以降に収穫が可能となることを確認しました。萌芽枝の本数調整による成長促進効果は認め

られませんが,収穫量と病害虫防除を考慮し,現時点では台伐りして1成長期後に萌芽枝

数を5本程度にして栽培することが望ましいと考えられました。



3 これまでの試験研究成果
  当センターの試験研究成果は,研究報告や各学会誌などへの投稿を通じて公表しています。

 当センターの研究報告書はこちらをご覧ください。


 機関誌等への発表項目はこちらをご覧ください。
 なお、
各種学会や他機関の機関誌などに投稿した論文などにつきましては,著作権の関係上,各
学会・機関のへのリンクのみ掲載してありますので、ダウンロード等についてはリンク先に確認ください。



4 試験研究発表会
 森林技術総合センターでは,試験研究の成果と日頃の普及活動実績を,広く県民の皆様に御紹介
するために,森林技術総合センター発表会を毎年1回開催しています。

(1) 令和4年度森林技術総合センター発表会
 今年度の発表会は、令和4年7月29日(金)に、鹿児島県歴史・美術センター黎明館(2階講堂)で
開催
予定です。(今年度は終了しました。)
 発表プログラムは、こちら
    

〇モウソウチク林における帯状伐採の効果−効率的な竹材生産に向けて−
竹林面積・竹材生産量ともに日本一の鹿児島県では,県内竹材生産量の約7割をパルプ用竹チップ
として利用している。近年では,CNFや発酵竹パウダー等,新たなマテリアル利用への取組が進んで
きている一方で,人工林への侵入竹や放置竹林,竹材生産者の減少等の課題も抱えており,森林整備
と竹資源の有効活用の両面で,効率的な竹材生産技術が求められている。そこで,2調査地において,
抜き切り伐採と帯状伐採の功程調査を行い,竹材生産量や労働生産性を比較した。また,伐採後2年間
のタケノコ発生調査を行い,竹林の回復状況を比較したので報告する。詳しくはこちら


〇ヤマザクラ自生個体群の地域的特徴とその育苗方法−地域性苗木の生産と普及に向けて−
ヤマザクラは広葉樹の中でも最も県民に親しまれ,よく植栽される造林樹種のひとつである。
当センターでは,斜面下部域における不採算人工林の針広混交林化に向けた植栽樹種として
ムクロジを選定したが,斜面上部域での植栽にはヤマザクラが適していると考えている。
一方,よそから持ち込まれたヤマザクラとの種内交雑により,県内のヤマザクラ自生個体群の
保有する地域的特徴や環境への適応力などが失われることが危惧される場合は,自生個体群由来の
地域性苗木による植栽を検討する必要がある。そこで,県本土の南部と中央部,北部の3地域に
自生するヤマザクラ個体群の形質的特徴の相違を調べることで,地域性苗木の必要性を検討する
とともに,スギコンテナ苗木の育苗技術を用いたヤマザクラの実生育苗に取り組んでいるので,
その内容について報告する。詳しくはこちら

〇最近みられたスギでの被害−コンテナ苗から成木まで−
当センターには,造林木や緑化樹,枝物など様々な樹木の病害虫等による被害相談が毎年
数多く寄せられている。最近は再造林の増加に伴ってスギに関する相談が増加傾向にあるが,
その内容は育苗中のものから,植栽後間もないもの,成木までの様々な成長段階や生育環境下の
ものであり,被害の原因とその対処法も多岐にわたる。例えば,育苗中のコンテナ苗では,潅水や
ハウス内の蒸れなど管理上の問題による被害が発生していた。植栽後の幼齢林では,出荷された
苗を植栽するまでの管理方法や植栽方法が不適切であったこと,植栽した場所が不適地であったこと
などが原因で,活着不良となって枯れたケースも多くみられた。また,成木では落雷や腐朽などによる
被害がみられた。なお,幼齢木においてみられたトウモロコシの害虫として知られるアワノメイガ幼虫
による穿孔被害は,全国初の事例となった。今回は,これらの被害について報告する。詳しくはこちら



(2) 過去の発表成果(令和2年度)

〇春季下刈りと下刈り回数削減は適用できるのか?
全国的に人工林の多くが本格的な利用期を迎える中,本県においても主伐が 増加し,再造林
面積が増加している。また,再造林面積の増加に伴い,下刈り 面積も累積的に増加しており,
林業労働力が不足している現状から考えると, 今後,下刈りを行えない造林地が発生する
可能性も否定できない。 そのような中,下刈りの確実な実施や省力化に向けて,下刈りの実施
時期を 早める「春季下刈り」及び下刈りの省力化を図る「下刈り回数削減」について 調査を行っ
たところ,春季下刈り及び下刈り回数削減は適用可能であるという 結果が得られたことから,
その内容や今後の課題について報告する。

サカキを加害するヨコバイの生態と防除
 本県のサカキ・ヒサカキの生産量は全国2位であり,本県の重要な特用林産 物となっている。
近年,本県ではサカキの成葉に白点被害が確認されている。 サカキは葉の美しさが重要視
されており,白点被害の発生によって商品価値の 低下が懸念される。被害地で調査を行った
ところ,他県で報告のあるサカキを 加害するヨコバイ(以下 ヨコバイ)が本県にも生息している
ことが明らかに なった。 そこで,ヨコバイによる被害を防除するため,本県におけるヨコバイの
分布 状況と発生時期,サカキへの加害形態や農薬による防除試験を行い,これらを 基に防除
スケジュールを検討したので,その結果について報告する。

再造林に向けた林木育種からのアプローチ −スギ開発品種とコンテナ苗の活用−
再造林は,林木育種の成果を活用できる好機である。木材価格の低迷や林業 労働力の不足
など,林業経営をとりまく環境が厳しい状況で森林を適切に更新 するためには,造林・育林
コストの低減や施業の効率化を図る必要があり,林 木育種の分野で研究開発が進められて
きた「成長に優れた品種」や「コンテナ 苗」の活用が課題解決のためのツールとして注目され
ている。次世代の森林づ くりに「成長に優れた品種」や「コンテナ苗」はどのような役割を果た
すのか。 本発表では,再造林における現状と課題を整理した上で,林業の成長産業化 を実現
するための切り札とされる次世代のスギ優良品種とコンテナ苗に関する 試験結果について
報告する

(3) 過去の発表成果(令和3年度)

○ スギ人工林を針広混交林に誘導するためのヒント −スギ人工林の現況把握と目標林型の設定−
2019 年度から始まった森林経営管理制度により、所有者自らが適切な経営管理を実施でき
ない森林のうち、林業経営に適さない森林、いわゆる不採算人工林については、市町村が森
林 整備を実施し、管理コストの低い針広混交林等へ誘導することになった。 針広混交林等へ
誘導するには、現在の森林の姿と将来の森林の姿を正しく把握することで、 はじめてその誘導
に必要な施業方法を設計できると考えられるが、林業専門職を配置していな いほとんどの市町
村にとっては、現在や将来の森林の姿を把握することが難しいと思われる。 この問題を解決
するためには、現在の森林の姿と将来の森林の姿(目標林型)の単純化(類型 化)が必要であり、
これによって、施業方法もパターン化できると考えている。今回、斜面下 部や谷部に成立して
いる人工林や針広混交林、広葉樹林を対象に植生調査を行い、森林の類型 化と目標林型や
施業方法について検討したので、その結果を報告する。

○ スギ人工林を針広混交林化するために何を植栽すべきか −斜面下部や谷部での植栽に適した
広葉樹の選定−
森林経営管理制度により、林業経営に適さない人工林については市町村が管理コストの
低い 針広混交林等へ誘導することになった。針広混交林等へ誘導するには、林内に侵入・
定着した 前生稚樹の成長を促す施業が必要であるが、前生稚樹の少ない林分では、広葉
樹の植栽も検討 しなければならない。 一方、山腹の斜面下部や谷部は陸域から水域への
移行帯であり、そこに成立する森林は、斜 面から河川へ流入する雨水や土砂の動きを緩和
したり、多種多様な生物が生育・生息する場を 提供したりするなど、属地的に極めて重要な
役割を担っていることから、このような立地での 植栽については、これらの点に十分配慮した
樹種選定が求められる。 そこで、斜面下部や谷部での植栽樹種について、どのような選定
基準で候補樹種をピックア ップし、絞り込みを行ってきたか、その手法と結果について報告
するとともに、選定樹種の播 種試験についても簡単に紹介する。

○ 採種から採穂へ −抵抗性マツの挿し木実証試験について
松くい虫被害によって公益的機能が低下している森林が県内に散見されているが、海岸
地帯 においてはクロマツ以外の樹種による機能回復が難しく、防風・防潮機能の早期回復
にはマツ 材線虫病に抵抗性のあるクロマツによる造林が不可欠である。 一方、現行の抵抗
性マツ苗は種子から生産されるため、種子の豊凶による影響を受けやすく、 また、マツノ
ザイセンチュウの接種検定により得苗率が毎年変動するなど、苗木の安定供給も 難しい。
そこで、現行の抵抗性マツよりもさらにマツ材線虫病に対して抵抗性のある「第二世代マツ
 材線虫病抵抗性マツ(ハイパーマツ)」が国の機関等により開発されているが、ハイパー
マツ の挿し木増殖技術とコンテナ苗生産技術を組み合わせることによる「ハイパーマツ・
コンテナ 苗」の実用化に向けた調査・検証をしたので報告する。