(1) 小型穂を用いたスギコンテナ苗生産について(平成29〜令和元年度) →成果No.14:1-2
スギさし木コンテナ苗の増産に当たっては、多くの挿し穂が必要になるため、採穂木から多くの挿し穂を採取することのでき る「挿し穂の小型化」に着目し、小型穂を用いたコンテナ育苗試験を行いました。
〔結果〕
挿し穂の長さが20cm以上であれば、挿し付け後(秋ざし)、概ね1年で、苗高・根元径の平均値が本県の出荷規格(苗高35cm以上、根元径5mm以上)に到達することがわかりました。
また、小型穂を用いて短期間で規格苗を育成するなら、用土量と育苗密度が苗木の成長に及ぼす影響を考慮し、300ccコンテナの全ての孔に挿し付ける方式が最適であると判断されました。
(2) カメムシによるセンリョウの落果被害について(平成30〜令和元年度) →成果No.14:5-6 落果被害が発生するセンリョウ圃場で、多数のムラサキシラホシカメムシの生息が確認されました。そこで、ムラサキシラホシカメムシをセンリョウの枝先に放飼して吸汁や落果を観察するとともに、センリョウ果実を餌として飼育を行い、生育・繁殖状況を調査しました。
〔結果〕
ムラサキシラホシカメムシはセンリョウ果実を吸汁し、吸汁された果実は落果すること、飼育上ではセンリョウ果実のみを餌として成育・繁殖が可能であること等を確認しました。ムラサキシラホシカメムシのセンリョウへの寄生や加害は、これまで報告がなく、初確認となりました。
(3) 下刈りの時期分散及び回数削減について(平成28〜令和2年度) →成果No.14:3-4
主伐面積の増加に伴い、下刈りを必要とする造林地の面積も累積的に増加していますが、林業労働力は長期的にみると減少傾向にあります。今後、下刈りを確実
に行っていくためには、下刈りの時期分散や回数の削減が必要であり、春季(5月)下刈りや下刈り回数削減の可能性について試験しました。
〔結果〕
下刈りの時期分散については、春季に下刈りを行ったところ、夏季の下刈りと同等以上の効果が得られ、春季下刈りは適用が可能であることを確認しました。また、下刈り回数の削減については、植栽木と競合する雑草木が最大高さ2m程度の草本植物(ススキなど)であれば、下刈り回数を5回から3回に削減することが可能であることを確認しました。
(4) スギ幼齢木で発生したアワノメイガによる穿孔被害について(令和元〜令和2年度)
植栽1年目のスギ幼齢木で、主軸の折損被害が発生しました。これまでに知られていない被害形態であったことから、害虫生息状況や被害率等の調査を行いました。
〔結果〕
主軸の折損は、アワノメイガ幼虫の穿孔が原因であることが明らかになりました。植栽木の約60%で穿孔がみられ、穿孔が深いものでは折損が生じていました。アワノメイガはトウモロコシなどの害虫として知られ、県内でも広く分布していますが、スギを含む樹木での被害は国内で例がなく、初確認となりました。
(5) サカキの省力化栽培技術の開発について(令和元〜令和3年度)→成果No.15:4-5
管理不十分なサカキ林を,萌芽更新によって省力的で生産性の高い林分に仕立て直す技術を開発するため,25年生以下のサカキを高さ60cmで台伐りし,萌芽枝の発生状況や本数調整による成長促進効果について調査しました。
〔結果〕
台伐りしたサカキからは全て13本以上の萌芽枝が発生し,サカキの旺盛な萌芽力と4成長期以降に収穫が可能となることを確認しました。萌芽枝の本数調整による成長促進効果は認められませんが,収穫量と病害虫防除を考慮し,現時点では台伐りして1成長期後に萌芽枝数を5本程度にして栽培することが望ましいと考えられました。
(6) サカキの害虫「サカキブチヒメヨコバイ」について(平成29〜令和3年度) →成果No.15:6-7
サカキ生産地でサカキの葉に白点被害が発生しており、原因はサカキブチヒメヨコバイの吸汁によるものでした。これまで本県におけるヨコバイの生態や県内の被害状況については明らかになっていないため調査しました。
〔結果〕
ヨコバイは年間を通じて捕獲され、発生ピークは6月と11月の2山型でした。白点被害は新葉が硬化する8月頃から確認され、9〜11月及び4〜6月で被害が進行し、12〜3月は被害が停滞することが明らかになりました。県内における白点被害の発生状況は、全域でなく地域的にまとまって発生していました。
(7) オオシマザクラによるヤマザクラ自生集団への遺伝子汚染について(令和4年度) →成果No.15:2-3
近年、植栽されたオオシマザクラが野生化し、ヤマザクラなどの自生種と交雑して遺伝子汚染をもたらすことが全国各地で問題視されています。県内でもオオシマザクラの野生化が確認されたため、その分布状況を調査しました。
〔結果〕
調査個体46個体のうち8割にあたる37個体がオオシマザクラかその雑種で、残りの9個体はヤマザクラでした。県内でもオオシマザクラが野生化し、繁殖することが確認されました。野生のヤマザクラと交雑する危険性があるため、山地付近にはオオシマザクラなど外来種の植栽は避けるべきと考えられました。
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