春〜初夏のカイガラムシの防除について (令和5年2月13日更新)

  Aulacaspis yasumatusi は,気温が高いと活動が活発になることが知られており,これからの季節,奄美大島でもカイガラムシの繁殖が盛んになることが予想されます。カイガラムシの活動時期に備え,早急に被害葉の除去・焼却,株への薬剤散布を徹底して行ってください。

1 新芽の展開前(冬芽の状態の時期)に,マツグリーン液剤2やオルチオン乳剤などの浸透移行性の薬剤を散布

・新芽時期のマシン油乳剤の使用は薬害の恐れがあるため,浸透移行性の薬剤を使用します。
・新芽の展開前に散布しておくことで,新芽展開中の薬効も期待できます。
・幹の凹凸部分,冬芽や葉柄基部の線毛状の部分にもカイガラムシが潜んでいることがあるため,株全体に散布します。




2 新芽が展開し,葉が固まった時期に,再度薬剤を散布
 散布時期目安:葉色が濃くなり,展開した葉の葉先が硬く,触ると痛いと感じる頃。




注意!
●実などを食用とする場合は,薬剤は使用できません。
特に,浸透移行性の薬剤は植物体内を薬効成分が移行するため,直接実に散布していなくても,薬効成分が実へ移行する可能性があります。


奄美大島でソテツを加害するカイガラムシ(Aulacaspis yasumatsui

1 Aulacaspis yasumatsui (以下 本種)による被害の特徴と見るべきポイント



葉裏
裏面から寄生。多発すると表面にも寄生し,白い粉が降りかかったように見える。
雌成虫
介殻はほぼ円形で白色,径は約2mm。殻で覆われているいるため移動できない。【写真:大島支庁提供】



葉柄部
葉の裏表に寄生していなくても,葉柄部に寄生していることがあるため注意!!
新芽
激害になると新芽にも寄生。

● 被害の進度





微 害
葉表面は寄生が少なく,緑色。
中 害
葉表面への寄生が多くなり白っぽく見える。カイガラムシが付着していた葉の中軸付近から変色が始まる。
激 害
葉の一部が枯死して褐色になる。
枯 損
葉全てが枯死して褐色になる。


 本種による枯れではない枯れ



旧葉枯れについて
 
 健全なソテツでは,下部の葉が枯れて垂れることがあります。これは,ソテツが旧葉を自ら枯らす生理現象によるものです。
塩害による枯れ
 
 ソテツは耐潮性のある植物ですが,海岸線沿いなど風が強く,よく塩が葉に付着する場所では塩害によって葉が枯れてしまうことがあります。
 小葉の先から変色している場合が多い。


3 本種と異なるカイガラムシによる被害





ナガオコナカイガラムシ
葉に白い綿が付いたように見える。雌成虫は体長約5mm,白色で殻を持たず移動できる。
ハンエンカタカイガラムシ
葉に褐色のイボが付いたように見え,白っぽく見えることはない。雌成虫は体長約3mmで黄〜茶褐色。

4 防除方法

対 策

✔ 被害葉は切り落として処分。
  ・ 焼却できる場合は,現地もしくは焼却施設等で焼却。
  ・ 焼却できない場合は,ビニール袋などに入れてゴミとして出す
  ・ 焼却施設等への移動の際は,カイガラムシが飛散しないようビニール袋などに入れる。


✔ 被害葉を切った後,幹や葉柄切り口など,樹体全体に薬剤を散布。幹の隙間や切り取った葉
      の基部などにも多数生息しているので,念入りに。


✔ 薬剤散布後も,こまめに観察。生き残りの他,根からの移動等により新たにカイガラムシが付着
  する可能性があるため,発見次第,適宜追加散布を行う。

✔  被害地周辺については,健全なソテツも冬季には剪定を行う(寄生場所を減らす。また,新芽の
  季節に被害に気がつきやすくなる)


✔ 一般に,カイガラムシは風による飛散や人の衣服などに付着して運ばれ分布を拡大するので,
  被害木処理の際は服装に付着しないよう注意が必要。


主な登録薬剤(令和5年1月23日現在)

・農薬の使用に当たっては,容器のラベルに記されている注意事項を守ってください。
・薬剤を使用したソテツ(実を含む)は,食用に用いることはできません。



 R41207記者発表

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